研究概要 |
虚血動物モデルを用いた,心停止による虚血性脳障害後の認知・学習機能障害について,メカニズムの解明とそれを基礎とした治療法の発見が本研究の目的である。平成18年度は本研究で用いられる実験手技の確立と調整を主に行ってきた。本年度の研究計画では1.慢性期の反応性低下は本当に鬱病を反映したものなのか、2.脳のどのような障害(状態)がこのような現象をもたらすのか、の2点についての研究を計画した。 1.行動研究:強制水泳課題によるうつ傾向の計測 スーパーメックス強制水泳試験4chシステムを導入し、虚血前の動物を用いて強制水泳課題の基礎データを取り、抗鬱剤投与効果の行動への反映を確認した。また虚血慢性期の活性低下予防効果がみられた抗血小板シロスタゾールを使い、現在非虚血群への投与効果を実験中である。これらの結果は日本動物心理学会第67回大会にて発表される。また海馬依存学習課題のひとつである八方迷路を設置し、予備実験を開始した。 2.組織化学研究:損傷部位計測 虚血後105日のマウス脳のKluver-barrera染色、ヘマトキシリン染色による損傷部位計測を行った。海馬CA1を中心とした損傷が虚血群で確認されたが、虚血後シロスタゾール投与群に置いても、同様の損傷が確認され、シロスタゾールによる活性低下予防は海馬の細胞保護によるものではないということがわかった。これらの結果はFENS Forum 2006(Suge, R., Sawada.M., Araki.N., Shimazu.K and Nomura.M. "Long-range effect of temporal global brain ischemia on learned behaviour in mice")で発表され、現在論文執筆中である。
|