研究概要 |
虚血動物モデルを用いた, 心停止による虚血性脳障害後の認知・学習機能障害について, メカニズムの解明とそれを基礎とした治療法の発見が本研究の目的である。一過性虚血は学習の維持と再学習を障害する。さらに虚血慢性期、本研究の実験条件下に置いては虚血後75日前後、において活動性の低下をもたらし、この低下は抗血小板剤シロスタゾールによって予防された。また80日後の組織的検討では海馬の損傷が確認された。 行動変容の検討のために、虚血慢性期の活性低下予防効果がみられた抗血小板シロスタゾールを使い、非虚血群への投与効果を検討した。10週齢においては非投与群に比べシロスタゾール投与群のうつ傾向が強く、実験群の慢性期に対応する30週齢の被験体においては差が見られなかった。このことからシロスタゾールそのものにうつ傾向を予防または活動性を上昇する効果が熱、と結論できる。さらに虚血・非虚血群を使った虚血後慢性期のうつ傾向計測を行ったところ、非虚血群では1日目の強制水泳の結果2日目では無動時間が増加したが、虚血群では前日の強制水泳の効果が翌日の行動に反映されないという結果を得た。このことから慢性期の反応性の低下はうつ傾向よりも認知機能低下の亢進である可能性が示唆される。シロスタゾールによる反応性低下の予防は脳損傷部位の縮小あるいは進行の予防によるものではないかと考えられる。うつ傾向に関連する行動と脳損傷の明確な関連性は見られなかった。これらの結果は第31回日本神経科学大会で発表された。
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