研究概要 |
Cbln1はClq/TNF-alphaスーパーファミリーに属する新しい分泌タンパク質であり、小脳顆粒細胞に豊富に発現する。cbln1ノックアウトマウスは平行線維-プルキンエ細胞間におけるシナプス形成不全やLTDの障害が見られることから、成熟小脳においてシナプス形成維持やシナプス可塑性に関わることが示唆されている。また興味深いことに、これまでにCbln1には少なくとも他に構造的に非常に類似した3つのファミリー分子(Cbln2,Cbln3,Cbln4)が神経系で存在していることも明らかにされてきた。 今回、私はCblnファミリー分子の詳細な発現及び生化学的特性を明らかにした。Cblnファミリーはほぼ神経特異的な分子であり、Cbln1及びCbln3は小脳顆粒細胞で豊富に発現するが、Cbln1が嗅球、視床、嗅内皮質など他の様々な領域にも強く発現していることを明らかにした。それに対し、Cbln2、Cbln4は主に発生段階において嗅球、大脳皮質、視床など広範に発現が認められたが、いずれも小脳には全く発現していなかった。(Miura et al.,Eur.J.Neurosci,2006)。 次に、Cblnファミリー分子をHEK293細胞や培養小脳細胞に導入してその生化学的特性を調べた。CblnファミリーはCbln3を除いて全てが糖鎖修飾を受ける分泌タンパク質であった。Cbln1は6量体を形成することが知られているが、Cblnファミリー間での相互作用をHEK293細胞での共発現により解析したところ、互いにホモマー、ヘテロマーを形成した。さらに、上記のように分泌能を持たないCbln3が、in vivoでCbln1とヘテロマーを形成することで一部分泌されることを免疫電顕やcbln1ノックアウトマウスの解析などにより明らかにした(Iijima et al.,Eur.J.Neurosci,2007)。
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