ヒトのトゥレット症候群および抜毛症の原因遺伝子として知られているSlitrk1のノックアウトマウスについて行動解析実験を行った。その結果、Slitrk1ノックアウトマウスはオープンフィールド試験や高架式十字迷路試験において不安様行動を示した。また、強制水泳試験および尾懸垂試験では無動時間が野生型マウスと比べて延長しており、鬱様症状を呈することも判明した。神経伝達物質をHPLC法で測定した結果、Slitrk1ノックアウトマウスではノルエピネフリンとその代謝産物であるMHPGが増加傾向にあることが分かった。さらに、トゥレット症候群の治療薬として用いられているクロニジン(α2-アドレナリン受容体作動薬)の投与により、Slitrk1ノックアウトマウスの不安様行動が改善されることも示した。本研究の成果は第30回日本神経科学大会(Neuro2007)および第30回日本分子生物学会年会(BMB2007)において発表した。 Slitrk6ノックアウトマウスの内耳の変化について詳細な解析を行い、Slitrk6ノックアウトマウスではらせん神経節および前庭神経節の神経細胞が発生期にアポトーシスによって減少することを明らかにした。また、このアポトーシスはニューロトロフィンシグナルの異常によって引き起こされていることも明らかにした。さらに、ノックアウトマウスの前庭・聴覚機能に関する検索を行った。前庭動眼反射および視動性眼球運動では前庭機能の異常は認められなかったが、聴性脳幹反応では聴覚機能の低下が認められた。本研究の結果は現在投稿準備中である。
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