研究課題
成体マウスのプルキンエ細胞は数十万本の平行線維と1本の登上線維による2種類の興奮性入力を受けている。登上線維の単一支配は一過性の多重支配期を経て確立し、協調運動や運動学習といった小脳の機能発現に重要であることが知られている。また、発達期における余剰な登上線維の排除には生後2週目から増加する平行線維シナプスの増加が不可欠であることが明らかになっている。これまでの解析からプルキンエ細胞棘突起に発現するグルタミン酸受容体GluRδ2が平行線維シナプスの安定化、余剰な登上線維の排除に関与していることが示唆されている。さらに誘導型分子欠損マウスを用いた解析からGluRδ2は成体期においても平行線維シナプス安定化因子として機能していることが示唆された(Takeuchi et al., 2005)。本研究の目的はGluRδ2が発達期だけでなく成体期においても登上線維多重支配を抑制する因子として機能しているかどうかを明らかにするというものである。具体的には誘導型分子欠損マウスを用いて、GluRδ2欠損誘導後の登上線維多重支配の出現について形態学的解析を行っている。その結果、誘導型分子欠損マウスでは、平行線維シナプス形成障害が出現してから登上線維多重支配および運動失調が出現するまでに数週間を要することが明らかになった。以上の結果はGluRδ2が成体期においても登上線維多重支配を抑制する因子として機能していることを示唆している。さらにGluRδ2のnull型分子欠損マウスが平行線維シナプス形成障害とほぼ同時に登上線維多重支配と運動失調が現れることを考慮すると、今回の観察結果は平行線維シナプス形成障害に伴う登上線維の可塑的変化が成熟とともに起こりにくくなっていることを示唆している。
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