今年度の研究によって、 1.上頚神経節や星状神経節において、GABA、GAD65、GAD67免疫陽性神経終末様構造が観察された。GABA陽性SIF様細胞が観察されたのに対し、GAD65やGAD67陽性の細胞体は観察されなかった。 2.上頚神経節、星状神経節、後根神経節ではGAD65やGAD67のmRNAは検出できなかった。脊髄ではGAD65やGAD67 mRNA発現細胞が大量に観察され、その一部は側角に分布していた。また、前根ではGABAやGAD67免疫陽性線維が観察されたのに対し、後根や、後根神経節ではそれらの免疫反応性は検出されなかった。 3.ほぼすべての上頚神経節や星状神経節のGAD67免疫反応性終末は同時にVAchT免疫反応性を示した。順行性にGFP標識された脊髄由来線維の終末の一部がGAD67免疫反応性を示した。 4.逆行性に標識された節前ニューロンの一部でGAD67 mRNAが検出された。このGAD67発現節前ニューロンの多くは側角の吻側部で観察された。 5.C8からT4の前根を切断することによって、上頚神経節や星状神経節のGABA及びGAD67陽性線維がほぼ完全に消失した。また、この切断によって、GABA陽性SIF様細胞も消失した。 以上の結果から、上頚神経節に投射するGABA作働性線維は、ほぼすべて脊髄交感神経節前ニューロンに由来することが示された。上頚神経節GABA作働性線維は同時にアセチルコリン作働性でもあり、速い時定数で作用する興奮性と抑制性の伝達物質が一つの終末に共存していることになる。また、側角吻側部は独特の神経回路を構成するらしいことが示唆されており、多くのGABA作働性節前ニューロンがこの部位に集まっていることは興味深い。 GABAの上頚神経節での作用として、長期増強の抑制や樹状突起の形成の促進などが報告されているが、共放出を念頭に置いた研究が今後必要になってくるであろう。
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