本年度は前年度に引き続き、RNAi法を用いたタウオパチー神経変性メカニズムの解析をすすめた。はじめにPan-neuron tau-Tg線虫の軌跡異常を指標とした効率よい半定量的スクリーニング法を確立した。この手法を用い、Gene chip解析でリストアップした遺伝子のうち、タウによる異常に伴い発現量の低下する遺伝子群についてスクリーニングした。その結果、再現性高くUncが誘発される遺伝子としてcol-98を同定した。異常タウがこれらの遺伝子発現に影響を与え、神経機能異常を起こしている可能性が考えられる。さらに導入したタウの発現抑制系確立するため、Tau-RNAiプラスミドを構築した。Tau RNAiの結果、タウ発現量の低下と共に、軌跡異常など行動異常の回復が確認された。この解析過程で、Pan-neuron tau Tg線虫数匹でのタウの検出法も確立した。今後はtau-Tg線虫へのRNAiを軸に行動、神経機能、病理変化、生化学的解析を組み合わせてさらに詳細なタウオパチーメカニズムの解明を進める。 一方、治療法検索として、既知の化学物質の有用性についても検討した。上記の線虫の軌跡を指標に幾つかの低分子量化合物について効果を確認した結果、一部の色素成分にタウによる神経機能異常を緩和させる効果があることを見出した。現在その類縁化合物、誘導体を中心にさらに薬理解析をすすめてゆく予定である。 また、これまでの解析からpan-tau TgではDaf-2 pathwayの亢進によりDaf-16の活性低下を模倣するような遺伝子発現傾向が観察されている。タウとdaf-2シグナルとの影響を調べるため、pan-tau Tgラインとdaf-2 mutant(e1370)との掛け合わせを終えた。
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