研究課題
統合失調症は世界人口の約1%で発病がみられる重篤な精神疾患である。統合失調症の発症原因は未だ明らかにされていないが、中枢神経系の発達障害が発症原因の一つであると考えられている。本研究では、統合失調症脆弱性因子として同定されたDISC1とその結合蛋白質の生理機能を明らかにすることにより、統合失調症発症の分子メカニズムを理解することを目的とする。(1)DISC1結合蛋白質Grb2の機能解析:DISC1とKinesin-1によりGrb2が軸索先端へ輸送され、軸索先端に局在することが神経栄養因子依存的な軸索伸長に必要であることを見出した。以上の結果は論文として報告した。(2)シナプス形成・成熟におけるDISC1の機能解析:DISC1によるmRNP複合体のポストシナプスへの輸送制御を検討した結果、一部のmRNP構成分子の輸送阻害が確認できた。(3)14-3-3εのノックアウトマウスの解析:DISC1結合蛋白質として同定した14-3-3εのヘテロのノックアウトマウスの行動解析を継続中である。(4)14-3-3εの機能解析:RNAiによる14-3-3εの発現抑制の系を立ち上げた。(5)DISC1のノックアウトマウスの作製:DISC1のノックアウトマウスの作製に着手した。(6)新規統合失調症発症脆弱性因子結合蛋白質の同定:DISC1、Chimaerin2結合蛋白質の探索を試みた。アフィニティーカラムクロマトグラフィー法による解析の結果、複数のDISC1新規結合蛋白質を同定した。また、Chimaerin2結合蛋白質の同定にも成功した。今後、生理的な条件下での結合を検討する。以上の結果から、平成18年度の研究計画はほぼ達成されたものと考えられる。
すべて 2007
すべて 雑誌論文 (2件)
Journal of Neuroscience 27
ページ: 15-26
ページ: 4-14