研究概要 |
1.培養神経細胞での小胞外過剰ドパミンおよびドパミンキノンによる神経障害 細胞質内の遊離ドパミン(DA)を増加させる小胞外DA過剰モデルを確立するために,DA系神経細胞CATH.aにL-DOPA生成を高めるBH4と小胞モノアミントランスポーター(VMAT2)阻害薬ケタンセリンの同時添加あるいはメタンフェタミン(METH)添加を行い,DA含有量により小胞外DAの増加,キノン生成の指標となるキノプロテイン(QP:キノン結合蛋白)量の増加および細胞障害を確認した.BH4+ケタンセリンあるいはMETH添加が小胞外DA過剰モデルとなること,小胞外過剰DA状態ではDAから生成されるDAキノン(DAQ)が細胞障害性にはたらくことを明らかにできた. 2.ドパミンキノンと相互作用のある分子・内在性キノン消去系分子の検索 DAセミキノンin vitro生成系に,システインあるいはグリシン残基を含むDA神経障害関連既知分子を加え,電子スピン共鳴法によりキノン検出を行い,DAQと相互作用・結合する分子を検索した.内在性分子である金属結合蛋白メタロチオネイン1(MT1)および数種のDAアゴニストが,DAQに結合し,消去することを明らかにできた. 3.小胞外遊離ドパミン過剰状態でのキノン体標的分子の発現および活性変化の検討 CATH.a細胞ならびにDAQを速やかにメラニンに酸化させるチロシナーゼの欠損マウスにMETH添加・投与を行うと,細胞死,DAトランスポーター(DAT)の脱落およびQP増加とともにキノン還元・消去酵素NQO1の増加が認められた.これらは,DA枯渇薬やNQO1誘導剤の前処置により抑制された. さらに,チロシナーゼ欠損マウスの線条体では,METH投与によるDATの脱落が,野生型に比べて著明に増悪した.DA神経毒6-OHDAによる片側パーキンソン病モデルマウスの障害側線条体において,NQO1遺伝子発現を促進する転写因子Nrf2の神経細胞での活性化ならびにDAQ消去にはたらくグルタチオンの合成基質のアストログリアでの取り込み部位の発現増加が認められた.小胞外DA過剰状態ではDAQ消去系の因子が活性化されていることを明らかにした.
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