本研究は、プレシナプスによる神経可塑性の調節機構が、脳の高次機能の制御にどのように関与するかについてノックアウトマウスを用いた解析により明らかにしようと試みているものである。 1)シンタキシン1Bのノックアウトマウス作成ノックアウトベクターを新たに作成しなおし、ES細胞のスクリーニングを行った。そこで得られたES細胞を使いキメラマウスの作成を試み、5匹のキメラマウスを得た。このキメラマウスとC57BL6マウスを掛け合わせ、シンタキシン1Bのヘテロ変異マウスの作成に成功した。現在、ホモ変異マウスが致死となるか確認している。また、C57BL6へ戻し交配を行い、このマウスの表現型を解析する準備を行っている。 2)シンタキシン1Aのノックアウトマウスの解析シンタキシン1Aのノックアウトマウスで行動異常が生じる理由について検討する目的で、ペプチド性の伝達物質の放出について解析した。その結果、このマウスでは視床下部からのCRH分泌が抑制されていることが明らかとなり、HPA-axisが障害されている可能性が示唆された。現在、この障害がノックアウトマウスでの行動異常に関与しているかについて検討している。また、このマウスで認められた5HT伝達の異常がこれらの障害と関連があるか検討している。 3) SNAP-25のノックアウトマウスを用いた解析シンタキシン1Aのノックアウトマウスで行動異常がプレシナプスの障害によるものかどうか検討するためにSNAP-25のノックアウトマウスの行動解析を行っている。これまでのところ、このマウスでシンタキシン1Aのノックアウトマウスの場合と比べ顕著な違いは見出されていない。現在、より詳細な解析を行っているところである。
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