研究概要 |
本研究は,難治性で新薬開発が熱望されている糖尿病性神経因性疼痛の発症機序明らかにするために,ATP受容体に着目し,ATP受容体が糖尿病性神経因性疼痛発症に対してどのような役割を持つのか,あるいは神経細胞およびグリア細胞がどのように関係しているのかについて検討を行った.本研究では,ストレプトゾトシン(STZ)をマウスに投与し,糖尿病性神経因性疼痛のモデル動物を作製した.血糖値は,STZ投与七日後にはほとんどのマウスで高血糖を示し,十四日後も高血糖状態は持続していた.そこで,七日後および十四日後のモデル動物に対して,von Frey法により,神経因性痙痛の主症状であるアロデニアが発症しているかを検討した結果,STZ投与七日後および十四日後共にアロデニアを発症していた.また,そのアロデニアはATP受容体拮抗薬のPPADS, TNP-ATP, IP_5Iにより濃度依存的に抑制され,糖尿病によるアロデニアにはP2X_3受容体の関与が示唆された.以前の研究で,糖尿病マウスのDRGニューロンでは,P2X_2およびP2X_3受容体mRNA,特に,P2X_3受容体mRNAの顕著な増加が確認されている.そこで現在,DRGニューロンの入力あるいは投射部位である後肢足底部皮膚,脊髄さらにDRGニューロンの細胞体をそれぞれ取り出し,ウエスタンブロット法を用いて,各部位でのP2X_3受容体タンパクの増減を検討している.現段階では,糖尿群と対照群の後肢足底部皮膚,脊髄,DRGにおけるP2X_3受容体タンパクの発現量に違いは見られていない.このことは,タンパク発現量の増加が小さいために現段階では変化が検出できていないのかもしれないため,今後,さらに分画を細かく分けてP2X_3受容体あるいはP2X_2受容体タンパク発現量の変化を検討する.
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