研究概要 |
糖尿病やガンなどで誘発される難治性の神経因性疼痛は,主症状にアロディニアが見られる。本年度は,坐骨神経部分結紮により生じるアロディニアおよび糖尿病により誘発されるアロディニアの発症機序の違いについて,一次求心性神経の入力部位である脊髄後角部位での形態変化および行動学的評価により検討を行った。その結果,坐骨神経部分結紮モデルでは,結紮一週間後においてアロディニアが発症し,さらに優位に結紮側の脊髄でマイクログリアの増加が見られた。そこで,結紮前からマイクログリアの活性を抑制するミノサイクリンを投与した結果,結紮により生じたアロディニアは抑制され,形態学的にも脊髄のミクログリアの上昇は消失していた。また,結紮後にミノサイクリンを投与してもアロディニアは抑制されなかった。一方,ストレプトゾトシン誘発糖尿病モデル動物では,ストレプトゾトシン投与一週間後に有意な血糖値の上昇およびアロディニアが見られた。しかしながら,脊髄内での顕著な形態変化は見られなかった。これらのことから,坐骨神経結紮によるアロディニアの発症にはミクログリア深く関与し,あらかじめミクログリアが活性化しないようにできればアロディニアは発症しないことが分かった。また,坐骨神経結紮により生じるアロディニアと糖尿病により生じるアロディニアの発症メカニズムは,一次求心性神経の入力する脊髄後角レベルで異なることが示唆された。今後さらに,坐骨神経結紮および糖尿病によりアロディニアが発症しているときの脳への影響を検討し,アロディニア発症メカニズムを明らかにしてくと共に,アロディニアを抑制する薬物を探索していきたい。
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