研究概要 |
申請者はエストロゲンが膜局在型α型エストロゲン受容体(mERα)を介した一酸化窒素(NO)産生によってアストロサイトのグルタミン酸(L-glu)トランスポーターの可逆的機能阻害を引き起こすことを明らかにしている.そこで,NOによるL-gluトランスポーター調節の詳細なメカニズムを検討するため,Xenopus oocyteにアストロサイト型L-gluトランスポーター(GLAST)を強制発現させトランスポーター電流をとるという実験系を立ち上げた.具体的には,L-gluトランスポーターのcDNAからcRNAを合成し,Xenopus oocyteへの微量注入によりこれらの機能蛋白質を発現させ,2本電極の膜電位固定法によりリガンドあるいはコマンドパルスにより誘導される電流変化を記録するという方法である.また,平成18年度補助金交付申請書には記載していないが,エストロゲン類縁化合物ライブラリを実験に適用する機会に恵まれたため,mERαと核内受容体としてのα型エストロゲン受容体(nERα)をそれぞれ特異的に活性化するリガンドの探索も開始した.今までのところ,nERのpartial agonistとして知られるタモキシフェンおよびその類縁化合物がエストロゲン同様mERαを介してL-gluトランスポーターを阻害することを見いだしている.今後,ライブラリに含まれるより多くの化合物についても検討する予定である.さらに,エストロゲンが脳神経系機能に総合的にどのような作用を及ぼすかという点について培養海馬切片を用いて検討し,エストロゲンが歯状回顆粒細胞に含まれる神経栄養因子BDNFの放出を促進することにより歯状回-CA3野のシナプス形成を特異的に誘導することを明らかにした(研究発表[雑誌論文]参照)
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