研究概要 |
膜蛋白質(受容体、イオンチャネル、接着分子など)により細胞は細胞外シグナルを正確に認識し、細胞内に情報を伝達する。膜蛋白質は単独で機能するのではなく、制御膜蛋白質や細胞質の足場蛋白質、シグナル蛋白質、細胞骨格などと複合体を形成して、その機能、局在が正確に制御されている。よって、生理的な膜蛋白質複合体を同定し、その性状解析を行うことは生体機能を理解する上で極めて重要である。これまでに私は神経シナプスの形態、機能において重要な役割を果たす足場蛋白質PSD-95を含むシナプス膜蛋白質複合体を精製し、ADAM22, LGI1, stargazinを同定した(Fukata Y, et.al, Science 2006)。興味深いことにこれら蛋白質はいずれも遺伝学的にてんかん発症に関わる蛋白質であった。さらに、LGI1は分泌蛋白質であり、ADAM22を受容体として機能し、AMPA受容体を介したシナプス伝達を促進することを見出している。本年度はLGI1の機能を明らかにする目的で1)脳内LGI1複合体の同定、および2)LGI1の局在解析、3)LGI1ファミリーの機能解析を行った。まず、タグ付きLGI1を発現させたトランスジェニックマウスからLGI1複合体の精製を行い、質量分析法にて特異的複合体構成蛋白質を定量的に同定した。また、電子顕微鏡を用いた解析によりLGI1の局在を詳細に検討している。さらに、LGIファミリー蛋白質(LGI2, 3, 4)の生理的複合体の探索を行い、興味深い候補蛋白質をいくつか同定している。このように、本年度の研究計画は十分達成できたと考えられる。
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