研究概要 |
動物は、視野周辺部に興味ある物体が出現すると、速い眼球運動(サッケード)を行い視標を中心窩に捉える。従ってサッケードの発現とは、今興味ある対象から次の対象に興味を移す注意の移動のメカニズムとも言える。本研究は微小電流刺激でサッケードの抑制を引き起こす前頭眼野の部位と、サッケードの司令を出すと従来から考えられてきた古典的前頭眼野の部位がどのように相互に働き、サッケードの発現と停止の制御を行っているかを解析し、その上丘に対する作用を明らかにしようとするものである。 今年度は引き続き、訓練したサルの上丘において、電気刺激によって起こる抑制の性質と神経活動の解析を進めている。さらにネコを用いた急性実験を行い、これまで不明であった垂直眼球運動系の中枢神経回路について、上丘から上斜筋運動ニューロンに至る経路を細胞内記録法と経シナプス染色法を組み合わせて解析した。その結果、垂直眼球運動系にも水平眼球運動系と同様に上丘から2シナプス性の興奮性および抑制性入力があり、各々中脳のフォレル野およびカハール間質核を介している事を明らかにした。これまで水平眼球運動系における抑制性バースト細胞に相当するものが垂直眼球運動系では明らかにされていなかったが、本研究により垂直眼球運動系にも抑制性バースト細胞が存在することが明らかになった(Izawa, et. al.; J. Neurophysiol., 2007)。
|