研究概要 |
心筋緩徐活性型遅延整流性カリウム電流(/_<ks>)は活動電位の再分極過程に必須の外向き電流で,電依存性カリウムチャネルであるKCNQ1によって構成される.一方,KCNEタンパク質は一回膜貫通構造をとる電位依存性カリウムチャネルの調節性サブユニットであり,現在までにKCNE1からKCNE5までの5種類が同定されている.これらはいずれもKCNQ1チャネルと機能的に会合し,それぞれ異なった電気生理学的ならびに薬理学的性質のチャネルを構築することで心筋/_<ks>を調節していると考えられる.本研究では2種類以上のKCNEタンパク質がKCNQ1チャネルにおよぼす相乗効果をホールセルパッチクランプ法により検討した.KCNQ1をKCNE1とCOS7細胞に共発現させると,ゆっくりとした活性化キネティクスを示す時間依存性のカリウム電流を誘発した.一方,KCNE2と共発現させると時間非依存性の常時活性型のカリウム電流を誘発した.そこで,KCNQ1をKCNE1とKCNE2の両方と共発現すると,時間依存性のカリウム電流のみを誘発したが,KCNQ1/KCNE1チャネル電流に比べ活性化の膜電位依存性が脱分極側にシフトしており,脱活性化速度も亢進した.またKCNQ1/KCNE1/KCNE2電流はKCNQ1/KCNE1電流に比べ,メフェナム酸に対する感受性が低下しており,心筋/_<ks>により近い応答を示すことがわかった.これらの実験結果から,KCNE1ならびにKCNE2が同一KCNQ1チャネル分子に会合することが明らかとなり,複数種のKCNEタンパク質が相乗的に機能して心筋/_<ks>チャネルを調節する可能性が示唆された.
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