研究概要 |
本年度は,1)流量推定および吸着防止アルゴリズムを含んだ制御装置の開発,2)自己心の心機能推定方法の開発および3)循環モデルを用いたシミュレーションを中心におこなった. 1)の制御装置の開発では,それまで研究代表者らが提案してきた,流量推定アルゴリズムおよび吸着検出アルゴリズムを採用したBCM製遠心ポンプ用の制御装置をPC上で実現し,基本動作の検証を行った.その結果,基本特性については良好な結果を得たが,流量推定を実際のポンプ制御に応用した場合,一時的な推定誤差の増大が生じた場合の対応についての検討が必要であることが示され,特にリアルタイムでの推定値の信頼度の評価をどのように行うかの課題が残った. 2)の自己心の新機能推定法については,自然心臓の心機能評価法として知られているEmaxが補助人工心臓装着時であっても有効な指標となるかを動物実験によって検証した.その結果,補助人工心臓の有無や補助率に関わらずEmaxの値はほぼ一定の値を示し,補助人工心臓装着時であってもEmaxが自己心の心機能を表す指標として有効であることが示された.しかし,補助率の変化によって圧容積関係における収縮期非伸展容積が変化することが確認された.したがって,従来のEmax計測方法では,実際に補助人工心臓装着時にリアルタイムに計測することは困難であり,何らかの推定アルゴリズムの開発が必要であることが示唆された. 3)の循環系シミュレーションでは,補助人工心臓装着時の循環系を模擬したシミュレータを構築し,人工心臓の駆動方法による自己心への影響についての検討を始めた.現時点では回転数一定制御や補助流量一定制御などのモデルによる表現が容易な制御システムのみの検討ではあるが,自己心の仕事量や拍出効率など,自己心に対する力学的かつ定量的な制御法の評価が可能となった.
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