研究概要 |
腱鞘炎などの蓄積外傷性障害においては,血流状態が重要な要因であり,近赤外分光法(NIRS)を利用すれば血行動態や組織性状を把握し簡便に作業管理や診断するシステムができる可能性がある. 第一の目的は,実用性,簡便性向上のために筋肉や腱の状態を非接触で計測するための基礎を確立することであり,弟二の目的は,非拘束的に血液量と酸素濃度をモニタリングできるよう,腕時計程度まで小型化するとともにワイヤレス化を推進し,非接触と非拘束で幅広い用途へ適用できる可能性を示すことである.今期間には以下の成果を得た. 1.理論解析 モンテカルロ法によるコンピュータシミュレーションを行い,非接触にともなう誤差要因の影響を解析した.その結果,光源から数cmの光強度分布を調べること(空間分解法)により,深部の組織の吸収係数の絶対値を算出できる可能性が示された. 2.装置の試作 装置は現有の非接触計測も可能な組織酸素モニタを大幅に小型化し,4×2.5×1.5cm程度の大きさを実現した.Bluetooth規格による無線化を行い,非拘束的に測定が可能となった. 3.定量性の検証 理論解析データをもとに,空間分解NIRSと連続光NIRSで筋・腱組織の酸素濃度を定量化する演算式を求めた.動静脈阻血試験を行って酸素消費量を測定したところ,非接触計測でも妥当な値を得られることが示された. 測定原理の基礎検討と装置開発を完了することができ,定量性・精度の向上のためのヒト実測へと繋げる成果を得た.
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