平成18年度は研究実施計画通り、まずシリカ製のコロイドプローブ上へのタンパク質の吸着方法の検討を行い、タンパク質分子を変性させることなくプローブ表面に固定する方法を確立した。また、原子間力顕微鏡(atomic force microscopy : AFM)を用いて、様々な溶液条件において生体適合性高分子(poly(2-methoxyethyl acrylate : PMEA)と主な血中タンパク分子であるフィブリノーゲン及びアルブミンの相互作用の直接計測を行った。様々な溶液条件でタンパク質とPMEAの接着力の計測を行い、PMEAとタンパク質間の接着力は溶液条件に依存しないことを確認した。またAFM及び水晶振動子法(quartz crystal microbalance : QCM)を用いた吸着実験から変性したタンパク質とPMEA表面の相互作用は大きくなる事実を得た。これらの結果からPMEAの血液適合性には界面水分子が非常に重要な役割を果たしているという知見を実験的に導いた。この知見については第67回応用物理学会学術講演会、及び第26回表面科学講演大会にて"液中AFMによる高分子表面の生体適合性の直接的評価"というタイトルで発表を行った。さらに"Direct Observation of Interaction between Proteins and Blood Compatible Polymer Surfaces"というタイトルで英語論文をバイオマテリアルに関する国際学術雑誌"Biointerphases"に投稿中である。 また界面水分子の振る舞いを詳細に解析するためにコンピュータシミュレーションのためのワークステーション及び第一原理計算のソフトウェアパッケージであるVASPを購入し、並列計算のための最適化を行った。古典動力学法で用いる水分子同士あるいはPMEAと水分子の相互作用を計算するためのパラメータを検討し、界面水分子の動的な振る舞いの解析を開始した。
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