本研究を通じて最も血液適合性に優れている高分子といわれるPMEA(poly(2-methoxyethyl acrylate))の血液適合性及び抗たんぱく質吸着のメカニズムを走査型原子間力顕微鏡(AFM: Atomic force Microscopy)を用いてPMEAと生体分子間の相互作用を直接的に計測することによって明らかにした。我々の結果はPMEAの血液適合性は界面に存在するイオンによる静電気的な相互作用に由来するのではなく、界面に存在するバルクの水よりも動きが遅い水分子の層によるものであるということが明らかになった。 さらに我々は界面水分子によって引き起こされる相互作用を分子スケールで測定するために、PMEA表面よりも水-基板表面の界面が明確であり、同様に抗タンパク質吸着特性を示す、オリゴエチレングリコール末端基を持つアルカンチオール自己組織化膜(OEG-SAM)を用いて相互作用の測定を行った。その結果OEG-SAM近傍には2-3nmの厚さで安定して存在する水分子の層が確認された。本発見は抗タンパク質吸着特性に界面水分子の構造、ダイナミクスが深く関係していると言うことを直接的に示した初めての例であり、今後生体適合性材料を設計する上で非常に有用な指針を与えることが期待される。
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