医用材料の生体適合性は表面上の様々な因子により大きく左右される。本研究では申請者がこれまで培った表面処理技術ならびに解析技術をもとに、 (1)ナノレベルで制御された表面官能基や表面被覆層を有するモデル表面の作製 (2)モデル表面上での細胞の接着・増殖・分化状態の検討 (3)モデル表面因子アレイチップの作製とその評価 を行っている。 (1)(2)において、水酸基、メチル基、アミノ基カルポキシル基等の表面官能基の比率を調整・制御した混合自己組織化単分子膜(Mixed-SAM)を作製し、ESCAと水接触角測定装置を用いて表面組成と水接触角との関係について厳密に測定を行い、表面組成因子が自由にかつ容易に調製できることが示された。また、この厳密に表面因子が調製されたMixed-SAM上での紳胞増殖は、表面組成因子の変化により劇的に変化し、またこの増殖変化パターンも細胞種によって異なることが示唆された。 (3)においても、従来行われているマイクロコンタクトプリント法やUVリソグラフ法ではなく、新たに導入したプラズマ照射器を用いたソフトエッチングプラズマ法により短時間でマイクロパターンが作製できる可能性を得た。 本研究により表面因子と生体適合性の関係を厳密に測定・解析・評価する新規材料表面解析システムめ礎えを構築することができた。これらの成果は、増殖させたい細胞に対し他の細胞より好ましい環境を与えられる表面を有する生体材料を開発・改良する指針となることが示唆される。
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