【研究の目的】生体に近赤外光を照射して、生体を透過または反射した光を撮影すると、容易に血管を可視化できる。本研究では、手指に近赤外光を照射しその透過光より血管像を取得し、上腕を圧迫させた場合における血管像に及ぼす影響を計測した。この上腕圧迫による血管画像の変化量が血管硬度に相関があると考えられる。被験者の年齢が血管硬度に影響があることが知られている。そこで、10才代〜60才代までを10才間隔に区分して、各年代10名程度の被験者に透過光量計測実験を実施した。 【実験方法】10才代から60才代の男女49名に実験に協力していただいた。実験の前に被験者の年齢、身長、体重を聞き、血圧を測定した。末端部位にうっ血を生じさせるために、静脈が閉塞するようなカフ圧力で上腕を圧迫した。静脈圧は動脈圧より十分に小さいので、圧迫した場合比較的小さな圧力で閉塞する。血液は動脈から送り込まれ続けるので、内圧が高まり血管は拡張する。このとき指尖部に近赤外光を照射し、透過した光をCCDカメラで撮影し、血管可視化画像を連続的に取得した。うっ血により血管が拡張した時、近赤外光は吸収され透過光量は下がり、血管可視化画像はうっ血するほど暗くなる。そこで、この血管画像の変化をグレースケール値で数値化して、ヒル関数にて近似した。その関数より、50%の暗さになるまでの時間T50を求めた。 【実験結果】年齢とT50との関係を指数関数で表現でき、年齢が増加するに伴い、T50の値は減少した。両者の相関係数は0。434であり、有意な相関が見られた。また、被験者を3グループ(10-29才、30-49才、50才以上)に区分し、各グループの有意差を調査すると、10-29才のT50は50才以上のT50より有意に大きいことが示された。
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