研究概要 |
抗がん剤は、投与後、患部だけでなく全身へまわり、がん細胞だけでなく正常細胞にもダメージを与え、副作用を引き起こす重大な問題点がある。磁場をがん細胞に曝露することで、薬剤の効能を患部のみで高められれば、投薬量を減らし、副作用を抑えられる可能性がある。そこで、本研究では抗がん剤,マイトマイシンCのDNA損傷作用における交流磁場曝露の効果について検討した。 実験材料の細胞として、ヒトの細胞と同様にマイトマイシンCのDNA損傷作用を受ける大腸菌を用い、大腸菌に感染するλウイルスをDNAダメージセンサーとして利用した感度の高いアッセイ法により、マイトマイシンCのDNA損傷作用における磁場影響測定を行った。 交流磁場発生装置は、60Hzで最大磁場強度100mTとなるよう製作した。実験試料領域は、コイルにより発生する熱の影響を避けるため、恒温水槽より水を循環させることで温度を一定に保つように設計した。マイトマイシンCと磁場強度5〜100mTの併用曝露実験により、大腸菌の細胞におけるマイトマイシンCのDNA作用の影響を測定したところ、曝露3から5時間後にマイトマイシンCのみに比べ、約1.5倍のDNA損傷率の増加が認められた。また、今回行った磁場条件(5,20,50,100mT,各強度で最長5時間曝露)では、50mT,5時間曝露が最も効果的でマイトマイシンCのみに比べ、2倍のDNA損傷率の増加が認められた。 本研究結果より、交流磁場曝露は、抗がん剤マイトマイシンCのDNA損傷作用を強める効果があることが示唆された。今後はマイトマイシンC以外の抗ガン剤と磁場の併用効果や、薬効への磁場の影響メカニズムの解明を進め、さらに抗がん剤と磁場の併用治療の有効性について検討していく予定である。
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