研究概要 |
抗がん剤は、投与後、全身へ広がり、正常細胞にもダメージを与え、強い副作用をもつことから適量設定は難しく、また腫瘍細胞は抗ガン剤投与中に多剤耐性になるという問題点もある。近年、多剤耐性となった細胞でも磁場曝露により薬剤が効くようになったとの報告がある。そこで磁場を非接触で標的部位に作用させることで、局所的に薬の効果を高めることができれば、薬の投与量や副作用を減らすことが可能となると考えられるとこから、本研究では、磁場と抗がん剤の併用療法の可能性を基礎的に検討することを目的としている。 これまでに感度の良いウイルスを用いて測定を行い、磁場はマイトマイシンCのDNA損傷作用を2倍高めることが判明している。さらに当該年度では、マイトマイシンC以外の抗ガン剤シスプラチンやブレオマイシンの作用における磁場曝露影響を測定した。シスプラチンはDNAに架橋し、DNA合成阻害により細胞増殖阻害する作用をもち、ブレオマシンはFe^<2+>イオンを介して、DNA鎖切断により細胞増殖阻害、抗腫瘍作用を示す。シスプラチンと60Hz,50mT磁場との併用曝露の結果、細胞のコロニー数は減少し、磁場はシスプラチンの細胞増殖阻害作用を高めることが明らかとなった。またブレオマイシンと磁場曝露結果では、ブレオマイシンのDNA鎖切断作用が強められ、コロニー形成能も低下し、磁場がブレオマイシンの作用を高めることも示唆された。 今後は磁場強度および周波数の検討や薬効への磁場影響メカニズムの解明を進める予定である。
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