研究概要 |
本申請では、重粒子線がん治療を対象として我々が現在開発中である「増感紙-CCD系重粒子線CTシステム」により撮影された再構成画像の空間分解能がどこまで到達可能であるかについて、実験的手法により総合評価を行うことを目的としている。なかでも、空間分解能低下の一番の要因として考えられる多重クーロン散乱によるボケの影響を、我々が提案中である重粒子線版FDR(Frequency Distance Relation)法を適用することにより補正可能であるかについて、実験的に示すことを到達目標としている。初年度である平成18年度においては、まず、実験的評価を行うために必要な大サイズ空間分解能評価ファントムの設計、及び製作を行った。当初は放射線医学総合研究所重粒子線加速器HIMACにおける平成18年度後期実験シフト(申請5日間)において、今回製作したファントムを用いた重粒子線CT照射実験を遂行する予定であったが、ファントム製作が遅れたことと、後期シフト5日間のうちの最終日が12月であったことから、本年度は、CT照射実験を断念した。代わりに、平成19年度前期シフト(申請5日間)が先日発表され、本実験を今年5月、6月に5日間行うことが決定したところである。次に、重粒子線CT版FDR法の適用のための準備として、多重クーロン散乱による被写体内でのボケの補正関数として、これまでのToy Modelに代わり、Geant4によるモンテカルロシミュレーションによりRealistic Modelの調査を行った(弟93回日本医学物理学会(2006年9月、福岡)で演題発表)。その結果、Toy Modelとの比較において、そのボケの効果が実際は最大で150%大きいことを見出した。更に、FDR法を適用した際に生じる高周波ノイズ強調の問題を解決するために、画像復元理論の分野で用いられているウィナーフィルターを適用するための準備、及びその評価を行った(第94回日本医学物理学会(2007年4月、横浜)で演題発表予定)。ここで、これらの解析は、フリーの画像処理ソフトとして知られている「ImageJ」のplugin機能(java言語によるプログラム)で遂行可能とし、来年度撮影予定である大サイズ空間分解能ファントムの重粒子線CTデータへの適用の準備が整ったところである。また、本結果は、11月に開催されるIEEE Medical Imaging Conference 2007(Hawai, USA)で発表予定である。
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