研究概要 |
本年度は,まず,生体内部の音波伝搬と温度上昇に関する基礎的な検討を行った.複雑な形状の生体と骨内部を伝搬する音波を計算機で解析する手法として時間領域差分(FDTD)法を用いた.FDTD法は任意の形状を計算機上でモデル化に適した手法ではあるが,複雑なモデルと広範囲の計算においては解析時間が長時間となるため並列計算機を用いて,計算時間の削減を図った.さらに,現実的な問題に対応できるようにその計算領域を従来の2次元から3次元に拡張して,その差異を確認した.そして,骨内を伝搬する音波をより正確に求めるために横波成分を同時に解析する弾性FDTD法のプログラムを開発して,骨の有無による超音波の強度分布がどのように変化するか求めた.その結果,強度として数dB程度の差が出ることが予測された.さらに,骨内の発熱は横波を考慮すると生体組織と接する面での発熱が大きくなることが分かり,安全性の面から重視すべき結果が示唆された. 次に,製作したシミュレーションソフトウエアの信頼性と精度を確認するために生体組織に似せた音響的・熱的特性を持つ生体模擬ファントムを作成して模擬実験を行った.周波数2MHzの超音波を連続30分間照射し,生体模擬ファントム内部の温度変化を熱電対で測定した.その結果,実測したデータとシミュレートした結果が良い一致が見られ,製作したソフトウエアの信頼性を確認することができた.今後はソフトウエアのユーザーインターフェイス部を改良し,より使用感が高いソフトウエアに改良し,一般へ配布する予定である.
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