本研究は、安価で現在も全身用PET装置によく用いられているBi_4Ge_3O_<12>(BGO)シンチレータに、従来検出器で起きていた感度向上に伴う分解能の劣化を改善する新技術である3次元放射線位置検出(depth-of-interaction : DOI)技術をあてはめたBGO-DOI検出器を開発することを目的とした。 通常PET検出器は、放射線を検出すると発光するシンチレータ結晶の配列が、光信号を光量に応じた電気信号に変換する受光素子に光学結合された構造をとる。PETでは、より正確な画像を得るためには被検体からランダムな方向に放射される放射線を可能な限り検出しなければならず、シンチレータの厚さも十分な検出効率が得られるほど厚くするのが理想的である。しかし、シンチレータの厚みを増すほど視野の端での分解能の劣化が顕著になり、従来技術では高感度と高分解能が両立しなかった。DOI検出器は、検出器内で放射線の検出された位置を深さ方向を含めた3次元で検出するもので、それにより分解能の劣化が抑制され、視野内で均一な分解能を実現できる。 BGOシンチレータは検出効率が高く安価で全身用PET装置によく用いられるが、発光量が小さく屈折率が大きいためDOI検出器の上層に用いると光量がさらに落ちると考えられていた。光量が少ないと同一エネルギーのγ線の吸収により得られる光子数の揺らぎが大きくなり、検出器の結晶判別能が低くなる。そのため、BGOのみで構成されるDOI検出器開発の試みは少なかった。このような現状の中、我々は結晶配列内部の反射材構造を工夫することによりシンチレーション光を操作する方法で、BGO結晶で4層分のDOI検出を行うことに成功した。
|