本研究は、安価なBGOシンチレータに、従来検出器で起きていた感度向上に伴う分解能の劣化を改善する新技術である3次元放射線位置検出(depth-of-interaction:DOI)技術をあてはめたBGO-DOI検出器を開発することを目的とした。そして前年度、BGO結晶配列内の反射材構造を工夫することで、γ線を検出した結晶の識別が深さ方向4層分まで可能であること、つまり4層分のDOI検出ができることを確認した。 本年度は受光素子に注目し、安価な単一、または数チャンネルの光電子増倍管(PMT)を用いたDOI検出器の開発を試みた。安価なPMTは一般的に信号のサンプリング間隔が大きく、少ないサンプリングで多くの結晶識別を行うことになる。4つのPMTを2×2に配列し出力の重心演算で発光位置を特定するという方法で、PMTのサンプリング間隔より小さな結晶の識別を行うことができる。例えばPMT2×2配列で5×5配列の結晶識別ができる。しかし、結晶配列の中央部分は4つのPMTに光が分配されやすいのに対し、端の方では真下のPMT以外の3つのPMTへ光を届かせるような工夫をしないと重心演算の結果が似たものとなり結晶応答が重なって結晶識別ができなくなる。通常、結晶配列とPMT間にアクリルなどの透明なライトガイドを挟むことで光の広がりをつくるが、ライトガイドが厚いと光は広がるが光量の減衰が激しくなってエネルギー分解能が悪くなり、薄いと広がりが不足して結晶識別能が改善しない。そのような背景の中、ライトガイドを使用せず光学反射材のみで光の経路を制御することによって結晶識別能を改善する方法を考案し、実験で確認した。前年度の研究計画の一つであったPETについての調査の結果、最近ではBGO結晶より性能の良いLGSO結晶の価格がかなり安くなってきていることが分かったため、実験ではLGSOを用いた。
|