研究概要 |
癌など疾病部の超早期検出を目的とした検査・診断システムにおいては,細胞レベル程度の微小疾病部を検出でき,かつその浸潤範囲を正確に同定できるような技術開発が求められており,そのための物理特性として組織の力学的特性が近年注目されている。癌など疾病組織はその進行に伴って硬さが変化するため,硬さ分布は癌の進展範囲を同定するのに重要な情報を与える。組織の硬さ分布を無侵襲で可視化するエラストグラフィは組織への変形印加技術と,超音波やMRIを用いた変形検出技術との組み合わせからなる。これら変形印加技術と変形検出技術を各々高度化・高感度化して,微細領域を標的変形でき,その変形を高感度に検出して硬さ分布を可視化できれば,細胞レベルでの疾病部の超早期発見につながる。そこで本研究では,音響放射力により組織の標的変形が可能な超音波と,その変形により生じる位相差を高感度に検出可能なMRIに着目して両技術を組み合わせ,マイクロレベルで組織の力学的特性を計測可能とする技術確立を目的とした。 本年度の重点課題とした計測の高精度化・高感度化のために,昨年度製作したMRI受信コイルにおいて無感度領域に加振用超音波プローブを配置しつつ測定対象に接触可能なMRIファントムフォルダを導入した。MRI受信コイルとMRIファントムフォルダとの組み合わせにより,寒天ファントムを対象とした撮像が妥当に行われることを確認した。さらに,最適な計測アルゴリズム構築のために,超音波による音響放射力印加前後のMR信号成分の位相差から測定対象内部の変位成分を検出する信号処理方式を試みた。その結果,1μm程度の変位検出が可能であったことから,マイクロレベルでの力学特性計測の可能性が示された。
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