1.目的 昨年度の研究に引き続き、両側の星状神経節近傍へのキセノン光線照射(以下、Xe-SGI)が自律神経機能及び立位保持能力に及ぼす影響を検討することを目的としたが、本年度の研究では特にXe-SGI終了後の立位保持能力の経時的変化に注目した。 2.対象と方法 本研究への参加に同意の得られた健常者30名(男性22名、女性8名、年齢23.6±4.3歳)を対象として、温度を一定(25℃)に保った室内で安静仰臥位の対象者に10分間のXe-SGIを実施(以下、Xe-SGI条件)し、この間のRR間隔変動係数(以下、CVRR)と1分ごとの両側上下肢皮膚温を測定した。さらに、Xe-SGI終了直後から5分おきに20分後までの立位重心動揺(総軌跡長、矩形面積等)を開眼、閉眼の2条件で測定した。また、Xe-SGIを実施しない場合の10分間安静仰臥位(以下、control条件)でのCVRR及び両側上下肢皮膚温と立位重心動揺についてもXe-SGI条件の場合と同様に測定し、各測定項目の比較を行った。 3.結果と考察、 CVRRにっいては、Xe-SGI及びcontrol両条件ともに開始前と比較して終了後での有意な上昇を認めたが、上下肢皮膚温にっいては、control条件と比較してXe-SGI条件でより高い傾向を示した。一方、立位重心動揺については、開眼・閉眼条件ともにXe-SGI及びcontrol両条件終了後10分までは各測定パラメータとも概ね低下傾向を示したが、Xe-SGI及びcontrol両条件間での各測定パラメータに有意差は認められなかった。以上の結果から、Xe-SGIは、副交感神経系のより優位な状態を引き起こす可能性が示唆されたものの、立位保持能力については特異的な影響を引き起こさない可能性が示唆された。今後は、有疾患例を対象として、Xe-SGIの自律神経機能及び立位保持能力に及ぼす影響に関する臨床的な検討が必要と考えられる。
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