本研究の目的は、構音訓練の補助機器としての電気的パラトグラフィについて、研究代表者が以前に開発した、パーソナルコンピュータに接続して利用できる構音訓練システムの臨床での適用可能性を検討することである。本年度は主に、臨床での適用可能性に関する国内外の実態調査と、小児にも適用可能な構音訓練用ソフトウェアに求められる要素について、既存のソフトウェアからの考察を行なった。具体的には、国内外の電気的パラトグラフィ関連の研究者ら(メーカー、歯科医師、工学者、教育学者)との情報交換や議論を行なった。その結果、研究代表者が以前に開発した電気的パラトグラフィシステム自体は、臨床での適用可能性が高いものの、オーダーメイド型の接触感知電極付き人工口蓋板のメーカー側での作成が現時点では困難であるという理由から、普及の可能性が低いことが考察された。その一方で、実際に臨床での適用を検討している専門家(歯科医師)との情報交換から英国での先進例が明らかになり、日本でも臨床での適用可能性が期待できることが分かった。また、英国での先進例に関する問題点も明らかになり、今後この問題点について検討していくことで、構音訓練にとって電気的パラトグラフィの使用が有益であることを示すことが可能であると考察された。その他、電気的パラトグラフィ以外の方法広く普及している構音分析・構音訓練のソフトウェアの仕様について実際の使用を通して検討を行ない、小児にも適用可能な構音訓練ソフトウェアに関する示唆を得た。
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