昨年に引き続き、神経変性疾患、特にパーキンソン病と脊髄小脳変性症の運動障害についての解析と、リハビリテーションの効果を、歩行解析、動作解析、電気生理学的に計測機器を用いて定量的に評価し、有効なリハビリテーションの方法を検討することを目的とした研究を継続している。研究成果を国際リハビリテーション学会(ISPRM)にて発表を行った他、以前から行っていた脳卒中患者の転倒に関する研究成果をアメリカの雑誌に論文発表を行った。内容は、脳卒中患者の転倒の危険因子を、prospectiveに検討したものである。112例を対象とし、性別、年齢、罹病期間、脳卒中のタイプ、麻痺側、リハビリテーション頻度、鎮静作用薬の投与の有無、認知症の程度および機能障害をSIAS(Stroke Impairment Assessment Set:脳卒中機能障害スケール)、能力低下をFIM(Functional Independent Measure:機能的自立評価尺度)にて初期評価を行い、その後1年間の転倒の事象の発生を前向きに検討した。結果として、101人のうち45人(44.6%)が少なくとも1回転倒し、そのうち20人(19.8%)は頻回に転倒した(2-10回、平均2.1回)。多変量ロジスティック回帰分析の結果、転倒に有意に相関しているのは、記憶(OR0.252)、足関節の可動域(OR4.278)、罹病期間(ORl.262)と麻痺側が左であること(OR0.076)であった。このロジスティックモデルでの転倒予測の敏感度は81.3%で、特異度は88.1%であった。今回の研究では、今まで入院患者や施設入所者を対象とした研究が多い中、多数の在宅の患者について検討を行い、新たにSIASやFIMなどの評価法を用いて転倒予測を行い、臨床上有用な知見を得ることができた。
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