脊髄小脳変性症の運動障害についての解析と、リハビリテーションの効果を、歩行解析、動作解析計測機器を用いて定量的に評価し、有効なリハビリテーションの方法を検討することを目的とした研究を行った。【目的】脊髄小脳変性症は、失調を中心とする障害が緩徐進行し、患者のADLを低下させる。治療として、TRHや反復経頭蓋磁気刺激療法(rTMS)、リハビリテーション(以下リハ)が施行されるが、その効果についての定量的な評価は少ない。今回の研究は、rTMSとリハの併用効果を定量的に評価することを目的とした。【対象】脊髄小脳変性症患者10名(男性8名、女性2名、49~72歳、平均61.2±7.3歳、LCCA5名、SCA-64名、MSA-OPCA1名)を対象とした。骨関節疾患や脳血管障害、その他神経筋疾患など歩行に影響を及ぼす合併症のある例は除外した。【方法】3週間の入院期間中に、対象患者に対しrTMSを計15回施行し、期間中に平行してバランス、歩行、協調動作を中心としたリハを施行した。治療の前後で、International Co-operative Ataxia Rating Scale (ICARS) による失調の評価と、重心動揺計での測定、三次元動作解析装置(Vicon)にて歩行解析を実施した。治療前後の平均値の差をWilcoxon符号付順位検定で比較した。【結果】治療後は、重心動揺計での測定では有意な改善はみられなかったが、ICARSのスコア(P<0.01)および、歩行解析にて頭部と体幹のマーカーの動揺(P<0.01)、歩隔(P<0.05)で、有意な改善を認めた。【結論】脊髄小脳変性症の失調症状に対して、rTMSとリハの併用は、特に動的なバランスの改善に有効と考えられた。この結果は2008年リハビリテーション医学会学術会議にて報告を行った。
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