筋衛星細胞は、骨格筋の損傷や肥大に重要な役割を果たすと考えられている未分化な細胞である。また、肝細胞増殖因子(HGF)は、伸張刺激や筋損傷により産生され、筋衛星細胞の活動を誘導する増殖因子の一つである。現在、成長過程における筋衛星細胞の活動およびHGF発現量の変化は十分に解明されていない。そこで、出生後の骨格筋における筋分化遺伝子およびHGF、HGF受容体(c-Met)mRNA発現量を指標として、筋衛星細胞の活動を評価した。出生後2週齢〜12週齢までのラット下肢筋を採取し、リアルタイムPCR法を用いて遺伝子発現解析を実施した。その結果、筋分化遺伝子の一つであるMyoD mRNAは、2〜8週齢までに著しく減少し、その後の変化量は緩やかとなった。HGF mRNAは、2〜4週齢の期間に顕著に減少し、その後緩やかに減少を続けた。c-Met mRNAは、期間を通じてほぼ一定の値であった。次に、非侵襲的に骨格筋へ刺激を加えた状態による筋衛星細胞の活動を評価するために、小動物用トレッドミルを用いて走行速度を0、16、20、24、28m/minの5段階に設定し、下り坂走行を30分間行わせ、72時間後の下肢筋におけるMyoD mRNAおよびmyogenin mRNA、PCNA mRNA発現量を調査した。その結果、MyoD mRNAは顕著な変化は示さなかったが、myogenin mRNA発現量は20m/min以上の速度で高い水準を示した。PCNA mRNA発現量は走行により著しく減少した。これらの結果から、運動負荷により筋分化遺伝子以外の細胞の活動が抑制される可能性が示唆された。筋衛星細胞とHGFの関連性についてはさらなる研究が必要である。
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