研究概要 |
本研究は,点字解読経験のない健常者18名を研究対象として,点字解読トレーニングを6週間実施し,この短期的なトレーニングによる手指感覚の学習効果と手指循環調節能変化の経時的推移についての関係を明らかにすることを目的とした.手指感覚トレーニングには1セット15文字(10種類)の点字解読課題をランダムに週3日6週間実施した.トレーニング介入6週前,介入直前,介入3週後,介入6週後のそれぞれ4つの期間に,手指感覚識別時の手指皮膚血流量の変動を調査し,比較した. その結果,手指皮膚血流量はどの測定期間においても点字解読中に減少した.その減少量は,介入6週前に-39.8±17.2%,介入直前には-38.4±18.4%であったが,トレーニング介入3週後には-34.8±17.2%,介入6週後には-25.2±16.2%であり,トレーニング介入により点字解読時の血流応答が減弱する傾向にあった.また手指血流応答のピーク値までの到達時間は,介入6週前および介入直前には,それぞれ11.2±2.9秒,10.4±3.2秒と大きな変化はみられなかったが,トレーニング介入3週後には8.0±2.5秒,介入6週後には6.6±2.4秒まで速く到達するようになった(P<0.05). 本研究成績より,点字解読中に手指血流量は交感神経性血管収縮により減少するが,その減少量はトレーニングにより減弱する傾向にあった.この結果は,トレーニングにより課題に対する難易度の減弱を反映している可能性がある.さらに,これらの手指循環反応において,感覚トレーニングにより反応速く起こるようになることから,トレーニングの学習効果によって,予測的な中枢性手指循環制御が出現するようになったものと推察された.
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