研究概要 |
Rizzolattiらによるmirror neuronの発見(Rizzolatti,1996)は、他者の行為を自分自身の内的な運動表象に対応付けることで、自分の行為と他者の行為を結びつけているという根拠を示した。mirror neuronは、対象がヒトである場合、単純な観察と、模倣をすることを前提とした観察ではその認知過程に大きな違いがあることが予想される。そこで、動作を認知し、模倣行動として表出するにいたるまでの一連の脳内機構を明らかにし、communication能力の基盤として動作模倣の認知理解・表出能力が重要な役割を持つという根拠を示したいと考えた。平成18年度は、運動模倣の過程を認知系と表出系に分け、模倣できる、できないといった外界から観察可能な事象のみならず、動作を認知し、模倣行動として表出するにいたるまでの一連の脳内機構について検討した。 実験では、向かい合わせになった他者の手指動作(動画または静止画)を認知する際め脳内活動を、f MRIを用いて調べた。その結果、左右手に関わらず、動画vs.静止画において後頭側頭領域(BA19)の活動が、観察している手とは反対側の脳半球に最も強く観察された。また、右腹側運動前野、右上側頭回近傍(BA22)にも活動が認められた。動画・静止画に関わらず、左手課題特有の活動として、右背側運動前野が活動した。以上のことから、左手vs.右手では、右背側運動前野は右腹側運動前野からの情報を統合し、抑制するべき運動を実運動の準備状態に反映させる働きをしていた可能性が考えられた。 これらの結果について、各種学会において模倣のメカニズムとの関係で口述およびポスター発表を行ったほか、他者の左右手動作の認知についてまとめた原著論文を生理人類学会誌に投稿し、掲載された。なおこの論文は、同学会誌において2006年若手奨励賞を受賞した。(2007年6月受賞式予定)
|