研究概要 |
本研究は,失語症患者における意集障害を検討し,その障害メカニズムを明らかにすることを目的とする。そのために,(1)言語手段を介さない方法と介する方法による意味障害の検討,(2)言語障害と意味障害の関連について検討する。本年度は意味障害を把握するため課題の作成にあたった。課題作成と同時に,適用しうる対象者について再検討を行った。【意味課題】非言語性意味課題と言語性課題の2種類を作成した。非言語性課題は,言語記号を介さない形式で意味障害を調べるために線画を用い,非生物条件と生物条件で作成した。言語性課題は,非言語性課題と同じ物品の名称を用いて,非言語性課題と並行的に作成した。【被験者の再検討】研究計画立案時には失語症患者のみを対象としていたが,認知症患者にも適用できるかどうかの可能性を検討した。認知症において意味障害は初期から出現するという研究報告があり,言語障害も疾患進行に伴い出現するので,認知症におけるコミュニケーション障害には両者とも影響している可能性が考えられる。患者各々のコミュニケーションにおいて,どちらの要素が強く影響しているかを知ることは,リハビリテーションの上で大きな手がかりになりうる。認知症への介入については社会的にも関心が高まり,言語聴覚療法分野でも認知症患者に対応することが近年増加している。認知症と失語症における障害を対比させることで,言語リハを進める上での示唆が得られると考えられた.【今後の検討点】一般に失語症の言語聴覚療法では単語や文などの刺激長を一つの条件として評価・訓練を進めることが多い。今回の課題でも,意味を構成する単位の長さ(大きさ)についても考慮する必要があるかどうか,現在検討中である。またデータ収集計画の具体化、を進める。
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