研究概要 |
Longaらの方法に準じてSD系雄性ラットに2.5時間の中大脳動脈閉塞後再灌流を行うことで脳卒中ラットを作成し、そのラットにリハビリを行ってリハビリ効果を規定する要因を検討した。 ラットに適用できる既存の麻痺評価法が無かったため、まず前肢麻痺評価法(Nanakuri Forepaw Stage : NAF stage)をヒト片麻痺の標準的評価法Brunnstrom stageと関連づけて新たに作成した。虚血後24〜96時間後にNAF stageを二検者により評価した信頼性は一致率0.92、κ係数0.88であった。麻痺評価と同時期に摘出した脳組織にTTC染色を行い計測した梗塞巣の体積とNAF stageとの相関係数は-0.87(p<0.001)でありNAF stageの妥当性が裏付けられた。また、運動機能の総合的評価法であるrota rod test, inclined plane testとNAF stageとの順位相関係数はそれぞれr=0.77,p<0.01、r=0.51,p<0.01であった。 脳梗塞手術3日後よりトレッドミルを用いた訓練(ラットが走行可能な最大限の速さ(4〜15m/min)で1日20分間、3週開)を行ったtreadmill群(n=10)と、リハビリを行わないcontrol群(n=10)の2群間で、NAF stageの経時変化を検討した。treadmill群ではリハビリ開始前と比較して2週目から有意差(p<0.001)が認められた。また、3週間後にはtreadmill群(平均値5.5)とcontrol群(平均値4,8)の間にNAF stageの有意差(p<0.05)が認められ、トレッドミルによるリハビリは麻痺回復に効果的であると考えられた。 この脳梗塞モデルラット・NAF stageの組み合わせはリハビリ訓練の効果判定に有用であることがわかった。この系を用いて今後、訓練頻度の変化などが麻痺回復に与える影響を検討する予定である。
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