研究課題
本研究は、複雑な手指運動学習課題における運動技能の両手間転移に関する神経機構の解明を目標としている。本年度は、主に実験システムの構築と評価を行なった。本研究においては、複雑な手指運動学習課題である健身球の回転運動課題を遂行中の被験者の1、機能的磁気共鳴画像法(fMRI)による脳活動計測、2、ビデオ監視システムによる球の回転運動計測、3、被験者の腕より導出した筋電図(EMG)計測から得られる3つの計測量を用いて運動学習を多角的・包括的に評価することを試みる。しかしながら、MRIが発生する高磁場・強電磁場はそれらの計測装置に影響を与え、逆に計測装置の動作ノイズは、微弱なMRI信号に干渉し画像アーチファクトをもたらす。そこで本年度は、大学共同利用機関である生理学研究所の協力を得て、MRIと計測装置間のクロストークを最小限に抑えるための計測装置の選定と実験環境の整備を行い、本研究に最適化された実験システムを構築した。本実験システムの性能を確認するために評価実験を行なった。実験では、健身球の回転運動学習を上記の3つの計測量で定量化できるかどうかを検討した。被験者には、fMRI撮像中に球の回転運動と安静状態を繰り返す課題を遂行させた。その結果、球の回転角加速度は運動の繰り返しとともに減少し、EMGにも同様な減少が見られた。これらの結果は、運動が力を必要としないかつスムースなものになった、すなわち学習による運動の効率化が実現されたことを示唆していると考えられる。またfMRIデータは小脳や大脳皮質運動関連領域に学習関連性の賦活を認め、先行研究に合致する結果を得た。これによって、本実験システムにより運動学習を評価できることが確認された。次年度は、本実験システムを用いて当初計画した両手間転移を検証可能な実験パラダイム実行し、運動技能の両手間転移に関する神経機構の解明に努めたい。
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