研究概要 |
本研究では,協働筋収縮を伴う動作において,各筋の力調節安定性に対する貢献度や役割分担を定量化する方法を確立することを筋音図法を応用して実現させ,最終的には力調節安定性の生理学的規定因子を解明することである.その第一段階として,単一の筋の筋音図の波形と発揮された力の波形の類似性の有無を確認し,一定強度の等尺性筋収縮中において,力の変動と筋表面の振動が類似しているかどうかを明らかにすることを目的とした. 課題動作は,第1背側骨間筋屈曲(親指を人差し指側に近づける)とし,等尺性最大筋力(MVC)の2.5〜60%の力発揮を行った.目標値および実際に発揮している力は,オシロスコープにリアルタイムで表示し,被検者にはそれを目視しながら実際に発揮している力が数十秒間目標値にできるだけ一致するように指示した.筋音図は,非接触型であるレーザ変位計を用いて,筋表面の皮膚上から導出した. 相互相関係数を算出した結果,数ミリ秒の時間ずれをもってピークが存在すること,またそのピーク値が統計学的に有意であることから(Rxy;0.49〜0.59,P<0.001),力の変動と筋音図には高い相関関係が認められた.さらにコヒーレンス解析の結果,その相関関係は,0〜15Hz帯で認められることが明らかとなった. 以上の結果より,筋収縮中における皮膚表面の振動は力変動と波形的に類似性があることが示され,筋音図波形はそれを発する筋の力変動を表していることが示唆された.よって,たとえ複数の筋から発せられた力の合力しか測定できないとしても,各々の筋の発する力変動が分離定量化できることから,本年度は複数の筋が収縮する動作における力調節課題中の力変動と各筋から取得した筋音図との波形の類似性の確認を上記の相互相関解析などで行い,力調節の役割を担っている筋の特定を行う予定である.
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