研究概要 |
学術的に力調節能力は,ある目標値に対して実際に発揮する(等尺性の)力ができるだけ精確に一致するよう試行をした際の力の変動(エラー)量で評価され,力変動が小さいほど力調節能力が高いことを意味する。高齢者においては,力調節能力が顕著に低下(力変動が増加)していることが数多く報告されており,世界的に高齢化を迎えている今日においては社会的意義が高い研究題目である。 力調節能力の評価値である「力変動」は,文字通り「力」信号を測定すれさえすれば数値化が可能であるが,たとえば,首や肩,背筋などの力信号は,測定自体が困難であるため,評価を困難にしている。そこで,力に代わる何らかの信号を利用した評価法の確立が必要であるが,本研究では,レーザ変位計測定による筋表面の微細振動(筋表面変位;筋音図)の導入を提案した。 対象は若齢成人とし,等尺性の第一背側骨間筋収縮(最大筋力の2.5%-60%)を対象動作とした。その際,力信号および高精度のレーザ変位計による筋表面変位を測定した。まず,波形同士の時間空間的類似性を確認するために,相互相関係数を算出したところ,どの収縮強度においても有意な正の相関関係が認められた。引き続き,波形同士の周波数空間的類似性を確認するためにコヒーレンスを算出したところ,5Hz以下の帯域において有意な類似性が確認できた。以上の結果より,レーザ変位計による筋表面の微細振動(筋音図)は力変動と波形類似性が非常に高いことが明らかとなった。筋音図測定は,対象筋が表層にさえ存在すれば可能であるため,力測定が困難な部位での力調節能力の評価値として応用可能であろう。
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