研究概要 |
本研究計画における研究手法の軸の一つである心理物理学的測定については,触覚刺激の時間順序判断にあたってベイズ統合が作用していることを発見した(Miyazaki et al. 2006, Nature Neuroscience).すなわち,本成果により,人間の脳の時間情報処理において,その運動処理段階(Miyazaki et al. 2005, Journal of Neurophysiology)だけでなく知覚処理段階でもベイズ統合が作用していることが明示された.ベイズ統合理論によって予見される時間順序知覚の振舞は,従来から知られていた「時差順応」(e.g., Fujisaki et al. 2004 Nature Neuroscience)とは正反対のものであったが,今回,新たに時差順応が機能的意義を持たない触覚刺激を用いることにより,ベイズ統合理論の予見と一致する知覚現象を発見するに至った.さらに,理論モデルを発展させることにより,時差順応が強く作用するために見掛け上はベイズ統合の作用が知覚変化に観測されない視聴覚刺激間の時間順序判断においてもベイズ統合が作用している可能性を予見した. もう一つの研究手法の軸である機能的磁気共鳴画像(fMRI)による脳機能マッピングについては,測定実施機関の早稲田大学所沢キャンパスのMRI施設が設置されたばかりで,機能画像測定および心理学実験設備が施されていなかったため,本年度は,機能画像測定用シークエンス,感覚刺激装置,感覚刺激装置提示用プログラム,行動測定装置の導入・調整といった測定のための基盤整備に従事した.
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