本研究の目的は、自然体験が参加者の自己成長に及ぼす効果を評価する手法としてナラティブアプローチを導入し、その有用性を示すことである。平成18年度は、1)文献研究、2)実地踏査、3)予備調査を実施し、平成19年度実施の本調査に向けての基礎資料を得ることを目的とした。1)文献研究では、社会構成主義とナラティブアプローチについて、社会学および心理学の知見の整理を行ったうえで野外教育関連の先行研究を概観し、評価への応用可能性を検討した。自然体験のナラティブは、a)体験の語り、b)内省の語り、c)関係づけの語り、d)評価の語り、を含み、語りの内容から理解可能な参加者の変化を、聞き手としての指導者はe)成長とみなす。このことから、「聞き手」としての指導者の存在を前提として、野外教育の評価研究へのナラティブアプローチの応用が可能と結論づけた。2)実地踏査では、野外教育、スポーツ心理学を専門とする研究者と共に大無間山(静岡県静岡市)にて1泊2日のグループ登山を実施しプログラムの構成に関する意見聴取を行った。3)予備調査では、大学生を対象としたキャンプ実習にて参与観察を行い、ふりかえり場面で語られる内容に着目したデータ収集を行った。2)3)から、実地踏査(尾根を行く登山・岩と森)と予備調査(沢を行く登山・水と森)では登山コースの特性が異なるが、環境の変化に富むという観点から本調査では多様な特性を含むコース設定が相応しいものと判断した。なお、平成18年度は、1)2)3)の成果を総合してプログラムの試行とデータ分析の試行を実施する計画であったが達成できなかった。そこで、平成19年度5月末までにプログラムの試行とデータ分析の試行を行い、その後引き続き当初の計画通り研究を継続する予定である。
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