研究概要 |
競歩競技は, 審判に歩型を判定されながら進行する競技であるため, 指導現場では, 目で見た動作形態で選手の競歩技能を判断しながら指導する傾向がある.しかしながら, ヒトが運動を行うには動力学的な要素が重要な要因であり, 競歩の競技力向上のためのトレーニング方法の立案においても, 運動学的知見に加えて, 動力学的知見を得ておく必要があると考えられる. 本年度の主な目的は, 昨年度までに得られた競歩選手による約5000mの競歩競技レースのシミュレーション実験のビデオ映像について, 動力学的観点からの分析をさらに加え, 指導現場へ還元できる知見を得ることであった. 被験者は, 競歩競技を専門とする競技者15名であった。解析は, 下肢関節で発揮された関節力, 関節トルク, パワーなどを産出し, 歩行速度との関係を明らかにすることであった. その結果は主に, 遊脚期前半では, 歩行速度の高い選手ほど, 股関節での屈曲の角速度が大きくなり, 屈曲トルクが発揮される傾向があった. また膝関節では伸展トルクが, 足関節では低屈トルクが僅かであるが発揮されていた. 遊脚期後半では, 歩行速度の高い選手ほど, 股関節で伸展の角速度が大きくなり, 股関節が屈曲から伸展に切り替わった後に, 股関節のトルクが大きくなる傾向が認められた. また膝関節では屈曲トルクが発揮されていた. 本研究で得られた主な結果を指導者に還元しながら, 競歩技能に関する知見の共有を指導現場と図り, 競技力および競歩技能の向上のために必要なトレーニング方法について検討を行った.
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