研究概要 |
昭和60年ごろから低下傾向が顕著となった子どもの体力低下問題に対して, その総合的な対策の推進が期待される. 先の答申(中教審, 平成17年7月)にもあるように, 初等教育段階の子どもたちにおいては「巧みに身体を動かす能力」, すなわち「調整力」をいかに育むか, そしてその「ミニマムとは? 」について盛んな議論が行われている. この調整力を育むにあたって, いかなる心理社会的環境の整備が「いま」を生きる子どもたちにとって必要か解明が待たれる. そこで本研究では, 幼児の心身の調整力と生活関連要因の関連性を検討することにより, 調整力を育む心理社会的要因の解明を図ることを目的に研究を行った. 本調査には東京都区部の3年保育の園児120名が参加した. 本調査には幼児の生活関連要因, 調整力要因(全身, 感覚運動, 知的能力発達, 下肢, 及び手指の各調整力因子), 及び心理社会的発達要因に関する項目群から構成される調査用紙が用いられた. 幼児の心身の発達状況を反映する各項目に対して, 保護者の行動観察に基づく評定が実施された. 主たる分析の結果, 幼児の調整力には, 祖父母, きょうだい, 遊び場の安全性, 友人数, 通塾日数, 及び保護者の運動(遊び)への参加が貢献要因となること, また睡眠時間, テレビ視聴時間, 及びゲーム機保有が負の貢献を示すこと, が明らかにされた. 本研究結果から, 幼児の「こころ」と体の調整力育成には, 心身の発達を促す物的・時間的・空間的・人的な要素含む遊び環境の体系的・系統的整備が大きな役割を果たすことが示唆され, 子どもの心身の健全育成の実現のために家庭,学校(園), 教職員, 運動(遊び)指導者との効果的な連携・協力が今後さらに発展することが期待される.
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