女性アスリートは激しいトレーニングや精神的なストレスから女性ホルモンの分泌が阻害され、無月経および月経異常が多くみられることは周知の事実である。しかし、実際に月経異常(無月経等)者の女性ホルモンの分泌動態の把握や、その処置方法および月経コントロールの介入研究はほとんどみあたらない。 そこで本研究の目的は、ピルの投与よるホルモン分泌動態等を事例的に調査することであった。 女子長距離ランナーを正常月経群(5名)と無月経群(4名)に分け、血中Luteinizing hormone(以下LH)、Folliclestimulating hormone(以下FSH)、Estradiol2(以下E2)およびProgesterone(以下P)を測定した。 また、無月経群へのピルの経口投与は8月と9月の2回行い、連続して7日間投与した後、3日間の体薬で性器出血の有無を確認した。 コンディショニングを把握するために、自作の調査票を用いて、毎日の体重、体脂肪率、および走行距離を記入させるとともに、体調を5段階で評価することとした。 その結果、以下の知見が得られた。 1.正常月経群と無月経群の身長、体重、体脂肪率および初経年齢に差はみられなかったが、平均年齢は無月経群の方が低かった。(p<0.05) 2.無月経群は基準値よりも著しくE2とLHの分泌が低く、正常月経群との間に有意差が認められた(E2:p<0.001)(LH:p<0.01)。 3.無月経群に中用量ピルを投与した結果、E2は2回目のピル投与後に有意(p<0.05)に上昇し、ピルの投与を止めると、E2の分泌が減少する傾向がみられた。 4.また、基準値より高値を示していたPはピルの投与により有意(p<0.01)に低下したが、ピルの投与を止めると上昇する傾向がみられた。 5.ピルの投与前と投与期間中で、体重および体調の変化は認められなかった。 以上のことから、続発性無月経ランナーに対して、トレーニング期を考慮しながらピルを投与する積極的な治療は、女性機能を正常にするために効果的である可能性が示唆された。
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