研究概要 |
本年度は核DNA,ミトコンドリアDNAへの酸化ヌクレオチド取り込みを回避するMTH1(MutThomologue),およびDNAの直接酸化で生じる8-oxoGを切り出すOGG1(8-oxoG DNA glycosylase)に着目し,運動習慣の形成がそれらの修復酵素のmRNA発現に及ぼす影響に関して検討した。被験動物は8週齢Wistar系雄ラットとし,1週間の予備飼育中,小動物用トレッドミルを用いて走行学習を行った(10m/min,10min/day,5days/week)。その後,コントロール群(n=6),低強度運動群(n=7),中強度運動群(n=7)に分類した。中強度運動群には週5日間,約65%最大酸素摂取量に相当する強度(20m/min)で,1日60分間の運動を6週間行わせ,低強度運動群には強度と時間を中強度運動群の半分にした運動を行わせた(10m/min,30min/day)。6週間の実験期間後,安静状態(運動群は最終運動後48時間)において骨格筋サンプル(ヒラメ筋)を採取した。 骨格筋における8-ヒドロキシグアノシン(8-OHdG)量,さらにはOGG1,およびMTH1のmRNA発現レベルをReverse transcription-polymerase chain reaction(RT-PCR)により評価した結果,運動を行った2群で,8-OHdGレベルがコントロール群に比し有意に低いことが示された。さらにDNA修復系酵素の発現レベルは,低強度運動群で他の2群に比べて高い傾向が示され,特にOGG1mRNA発現量に関してはコントロール群,あるいは中強度運動群と比し有意な高値となった。これらのことから,慢性的な運動負荷がDNA修復系酵素発現をアップレギュレートし,その運動強度は従来から各種生活習慣病予防に有用と想定されているものより低くても十分である可能性が示唆された。
|