研究概要 |
本研究の目的は,運動生理学分野で注目されているテレメトリー法とマイクロダイアリシス法をカップリングさせた系を用いて運動時の体温調節中枢(PO/AH)の中枢性疲労における役割を検討することである。 初年度の平成18年度は,まず実験環境を整備した。具体的には,雄ラットの腹腔内に小型体温計(テレメトリー)を埋め込み,その後ガイドカニューラーを脳内PO/AHおよび前皮質(FC)に挿入した。実験当日,小動物用麻酔装置(新規購入)を用いて,マイクロダイアリシスプローブをPO/AHに,脳温測定用プローブをFCに挿入した。 プロープ挿入2時間後から深部体温,脳温,尾部皮膚温を連続的に測定した。既存のHPLCシステムを用いてPO/AH内の神経伝達物質を定量した。実験終了後ラットの脳を取り出し,ミクロトーム(新規購入)を用いてプローブの挿入位置を確認した。 安静および運動実験において得られた成果は,以下のとおりである。 ・安静時においてDA/NA再取り込み阻害剤(Bupropion)の投与により,脳温と深部体温の上昇,および熱放散系の抑制を観察した。PO/AH内のNAおよびDAの上昇も確認した。 ・運動前にBupropionを投与したところ,その後の暑熱環境下における持久的運動能力の向上を観察した。運動終了時におけるBupropion群の脳温および深部体温は,コントロール群に比較し有意に高い値を示した。 ・安静時においてD_2レセプター促進薬(Quinpirole)を投与したところ,濃度依存的な脳温と深部体温の低下,および熱放散系の充進が観察された。 これらの結果は、安静時および運動中のPO/AHにおける神経活動が,体温調節機構や中枢を介した疲労に関与していることを支持するものである。最終年度となる平成19年度は,このホうなデータを踏まえ運動実験における薬理効果にっいてさらに検討を進めていきたい。
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