脂肪細胞における活性酸素と炎症性アディポカインである腫瘍壊死因子α(TNF-α)のクロストークに対する運動トレーニングの影響を検討した。実験にはWistar系雄性ラットを用い、コントロールc群とトレーニング(TR)群に分けた。TR群には週5日、9週間のトレッドミル走行を実施した。脂肪組織の活性酸素量をチオバルビツール酸反応物質(TBARS)で測定し、各因子の遺伝子、タンパク量発現を検討した。 TR群の皮下脂肪組織の活性酸素量は、C群に比べて差がみられなかったが、副睾丸、後腹膜周囲の脂肪組織の活性酸素量は有意な低値を示した。また、TR群の副睾丸周囲脂肪細胞の抗酸化酵素マンガンSOD(Mn-SOD)と細胞外SOD(EC-SOD)の遺伝子発現は、C群に比べて差がみられなかったが、タンパク量発現は増加した。さらに、脂肪細胞における炎症関連・マクロファージマーカー遺伝子の発現を検討したところ、F4/80遺伝子などの発現は両群で差はみられなかったが、TR群のTNF-αとmonocytechemoattractant protein-1 (MCP-1)遺伝子の発現がC群に比べて減少した。TR群の脂肪組織中のTNF-αとMCP-1のタンパク量発現も減少した。 MCP-1は血中濃度も運動トレーニングによって減少した。また、MCP-1の発現に重要であるextracellular signal-regulated Mnase (ERK)のリン酸化と転写因子c-fosのタンパク量発現を検討したところ、これらは運動トレーニングによって減少が認められた。以上のことから、運動トレーニングは酸化ストレスを軽減することにより、TNF-αなどの炎症性アディポカインによる脂肪組織の炎症反応を抑え、生活習慣病を予防・改善する可能性が示唆された。
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