研究概要 |
昨年度の研究では,高強度運動時において活動筋内の組織酸素飽和度(StO_2)の不均一化が亢進することを報告している.有酸素能の低い筋群では,高強度運動時において0_2バランスのミスマッチングが亢進し,StO_2分布が更に不均一化すると考えられる.一方,有酸素能の高い筋群では活動筋内における0_2バランスがより均一化する方向へシフトすると考えられる.つまり最大運動時におけるStO_2の不均一性と全身持久力との間には,負の相関関係が得られるという仮説がたてられる.そこで本年度は,最高運動負荷時における活動筋内StO_2の不均一性と最高酸素摂取量(VO2peak)との関係について検討した.健康な成人男性14名を対象に,30Wランプ負荷法による自転車運動負荷試験を疲労困憊まで行った.多チャンネル型近赤外空間分解分光法のプローブを,左脚側の外側広筋に対して長軸方向に沿って8箇所装着し,運動時におけるStO_2の変化を連続的にモニターした.なお各測定部位の皮下脂肪厚を超音波診断装置にて計測し,光学係数に与える脂肪厚の影響を補正した.その結果,運動強度の増大に伴い近位部に比べて遠位部においてStO_2が有意に低かった.また全測定部位において,疲労困億時におけるStO_2とVO2peakとの間に有意な負の相関関係が得られた(p<0.05).一方,疲労困憊時におけるStO_2の不均一性とVO2peakとの間に有意な関係は認められなかった.以上より,全ての測定部位においてStO_2とVO2peakとの間に有意な負の相関関係が得られたことから,有酸素能に優れている筋群では,ピンポイントではなく広範囲に渡り酸素の抜き取りが亢進していることが推察される.また,仮説に反してStO_2の不均一性とVO2peakとの間に有意な関係が認められず,PETを用いて0_2バランスの不均一性を調べた研究とは異なる結果が得られた.
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